第132章

個室はまだ賑やかだった。

黒田直人も来ていた。高橋遥との関係から、彼と稲垣栄作の仲は常にぎくしゃくしていて、顔を合わせても挨拶すらしない。

深夜になり、

個室内の男たちはほとんど帰ってしまった。

稲垣栄作はまだソファに寄りかかり、無表情でタバコを吸っていた。彼の前のテーブルの灰皿には、吸い殻が山積みになっていた。

黒田直人は彼を横目で見ながら、皮肉を言った。「どうした?最近夫婦仲が冷えてるのか?稲垣社長もこんな場所で酒に溺れるようになったか?まあな...追いかけるってのは簡単じゃないよな。昔は高橋遥が何年もお前を追いかけてたけど、今度はお前の番だ」

稲垣栄作は軽く鼻で笑った。「お...

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